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竹尾徳治氏(飛鳥・橿原ユネスコ協会相談役)のエッセイ

2013/04/12 1:49 に 地球システム・倫理学会事務局 が投稿   [ 2013/04/12 3:01 に更新しました ]

                                      世界ユネスコクラブ連盟公式提案

                     3.11を「地球倫理の日に」               飛鳥・橿原ユネスコ協会相談役 竹尾 徳治

 

はじめに

私が東日本大震災・原発事故2周年を前に、この惨害からいかなる教訓を引き出し、未来を切り開いていけば良いのかと思索していた時、かねてからご指導を得ている服部英二先生(注1)から一通のメールをいただいた。先生は震災後直ちに行動を起こされ、地球システム・倫理学会を通じ「3.11を地球倫理の日に」「国連倫理サミット開催を」との2つの提案をまとめられた。これをもって世界各地を回られ、官民ユネスコ関係者や多くの識者の賛同をえられ、本年(2013年)311日、民間の世界ユネスコクラブ連盟総会に取り上げられ、日本発のメッセージが世界へと届くに到ったとの報だった。そこで早速概要を紹介し、皆様のご参考に供したい。

 

「地球倫理の日」の制定の提案

201338日~13日、フィレンチェ(伊)ベッキオ宮殿で開催された世界ユネスコクラブ連盟(WFUCA)(注2)の理事会・国際会議にて東日本大震災発災日である311日を「地球倫理の日」に制定すべく、全世界・国際機関に向け公式によびかけることが提案された。この趣旨は地球システム・倫理学会(会長・服部英二)の二つの「緊急アピール」を受けてなされたものである。東日本大震災1ヶ月後の2011411日に発信された「国連倫理サミット開催と地球倫理の日創設の訴え」と、2012311日に発信された「3.11を地球倫理の日に」である。これらを受け、今回、総会で服部先生が基調講演をされることになった。(今回の2つのアピールは地球システム・倫理学会HP参照のこと。)

(アテネ2005年大会で分裂状態の世界連盟が松浦事務局長[当時]と服部特別顧問の尽力、「和」の精神で統一回復。)

今回の提案の基礎となった2つのアピールの重要なポイントは次のとおりである。 

 ①今次大震災と「原発事故」は、日本のみの問題から人類と地球にとって、文明の破局の第一歩として許容できない問題と考えなければならない。

 ②しかるに、破局の危機を秘めたこの事故から教訓を引き出し、新たな未来を開こうとしていない憂慮すべき現状がある。

 ③教訓とすべきは、第1には巨大被害をもたらす科学技術をリスクゼロでなければ決して使用が許されないこと。第2には最終廃棄処理方法がない核廃棄物に象徴される現在世代の倫理欠如が人類の緊急課題である。

 ④危機の根底に倫理の問題が存すとし、「力の文明」から「命の文明」への転換、「命」の継承を至上価値とする「母性原理」を再評価、脱原発に舵を切るべきである。  

 ⑤以上から、「地球倫理」の確立なしには次世代に美しい地球を残し、未来の人類文明を維持しえない。

 この提唱が世界ユネスコクラブ連盟の総会で公式に提案され、更に「国連倫理サミット」を来年(2014年)ワシントンDCで行うとしている。かくして2013年は「地球倫理」がより具体的なかたちで結実する年になると期待されている。

 

一石を投じるか「地球倫理の日」

 戦後67年の歴史をもつユネスコ憲章。この平和と共生の理想に反し、現実は見方によれば、核の恐怖はじめ国家間、民族間のエゴ、環境汚染の拡大等地球レベルの文明の危機が始まりだした時代とも言えよう。

 それだけに今回の提案では、大震災とフクシマ原発事故を経験した悲劇を二度と他国・他地域で発生させてはならないことが強調されている。1997年、ユネスコ総会は全世界一致で採択して美しい地球を未来世代に残す責任を決めた。その「未来世代に対する現在世代の責任宣言」に対しても今回の放射能汚染は背信行為であり、軍事・民事で二度の放射能被害を受けた日本人の核廃絶へと向かう歴史的責務は重い点を主張している。この「地球倫理の日」の提唱を軸に、世界の人々と共に意識を変える運動に広げうるならば人類の未来への貢献は限りなく大きいと考えられる。とはいえ、現実の政治経済の世界でユネスコの力は小さすぎるのかも知れない。しかし一方で、ユネスコには世界の「知と先駆的理念の収斂する場」という強みがある。またユネスコには、人々の意識に一石を投じ、その波紋を世界に広げ、現実政治を変える世論へと成熟させる役割がある。例えば、今日、私たちの常識となっている「生涯学習(教育)」(1970年代初提唱)や人類共有の遺産として40年前に採択された「世界遺産条約」もユネスコにより制定されたものである。ユネスコが「戦争の文化」に対峙し「平和の文化」を地道に粘り強く訴え続けて来た意味を、今、改めて噛み締める時代だといえよう。「諸国民の永続的な誠実な支持と知的精神的連帯」を説いたユネスコ憲章の理念からして、今回震災直後から2年、日本の民間の知的集団たる地球システム・倫理学会(会長・服部英二)が主導発信し、世界の良識へ働きかけ、賛同を得て「地球倫理の日」を世界ユネスコクラブ連盟(WFUCA)の公式提案にまで広げられた。今後国連やユネスコをはじめ、世界各国の各種団体に取り上げられ、毎年3.11を中心に世界中で多くのフォーラム等を通じ各人が「地球市民として自覚の拠点」(桑原武夫「地球の品位」)を見出していくならば、今回の悲劇や危機が教訓となり、未来世代に責任を持てる自然観や文明観の確立に貢献することは必至である。 


ユネスコ事務局長・イリーナリ・ボコバ氏、2012年、世界遺産40周年に来日。被災地を励まし民間ユネスコ発祥の地も訪問。今回の提案にも共感。

 

むすび

 「地球倫理」というと一見浮世離れし現実と乖離したことのように思われがちだが、この地球上のあらゆる人々が自らの子や孫に対し「今の延長線上でよいのか」「何を変え、何を継承すれば良いのか」「自然とどう付き合っていくのか」などを考える日=世界ユネスコクラブ連盟が呼びかけた「3.11地球倫理の日」が、多くの支持を得て私たちの身近のものとなることを願ってやまない。

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(注1)服部英二:21年間パリのユネスコ本部勤務、著名なプロジェクトに貢献、事務局長の特別顧問、麗澤大学比較文明文化研究センター客員教授、世界のユネスコ活動の理論的指導。主な著作『文明は虹の大河』(麗澤大学出版会)、『文明間の対話』(麗澤大学出版会)。

(注2)WFUCAThe World Federation of UNESCO Clubs Centers and Associations.1981年日本の民間主導で仙台にて結成。

 なお、本稿は「男女共生ネットTokushima」の「生き生き絆レポートNO4」に掲載予定の文章です。同会の了解を得て転載させて頂きました。

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