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戦争廃止システムの構築

地球システム・倫理学会第一回研究例会(東京)
戦争廃止システムの構築
提題:伊東俊太郎、吉田収、平田俊博
2007年5月20日(日)14時半から
東洋大学白山キャンパス6号館4階文学部会議室

吉田 収

序論

戦争は核兵器を生み核弾頭は世界の諸都市を標的とし一触即発状態で即刻核戦争、誤発射等で生物全滅の状態にある。戦争体制は地球温暖化、生物種絶滅その他 の相互に関連する地球問題群解決の道を阻んでいる。世界終末時計は核戦争の脅威で数分前を指し戦争は更に進める。戦争廃止は緊急の課題である。
文明、国家等の金字塔構造は支配者に都合よく被支配者に不都合である。支配者は敵国、愛国で扇動するが被支配者は蛮行と惨害で激動する。支配者は軍隊も戦 争も必要だが被支配者には徴用である。被支配者の大衆が真実に目覚め平和を求めれば金字塔構造も戦争も無くなる。支配者も目覚めれば平和を望む。

本論

  1. 戦争の問題

    戦争は以下のような大崩壊等を起こす:

    • 大惨禍(殺戮、搾取、差別、束縛、錯誤:五禍)
    • 大被害(自然、生態、生物、資源等の大被害)
    • 大破壊(経済、社会、文化、政治等の大破壊)
    • 大損失(教育、社会福祉、環境問題等の放置)
    • 大罪過(金字塔支配による全生命体系の大崩壊)

    戦争は以下の様に定義されうる:

    • 狭義:国家(都市国家~国民国家)間の暴力抗争
    • 広義:国家権力奪取のための国内暴力抗争(内戦)
    • 国家権力の転覆、交替(クーデター、革命)
    • 宗教間の利害衝突、暴力抗争(宗教戦争)
    • 文明間の利害衝突、暴力抗争(文明戦争)

    国家は物と力の豊富と便利のために作られた。都市国家(城市)の城壁で判る通り他者の差別、搾取、殺戮を事とし、その根本に利己主義の錯誤、束縛が ある(五禍)。都市国家から国民国家までの歴史は戦争の歴史であり、前世紀は究極的「国家主義と戦争の世紀」となった。国家は必要により形成されたが、不 必要、極悪罪過も起こす。戦争はその最悪、最大の物である。

    国家悪:

    錯誤:戦争、主権、集権、軍備、軍拡競争、侵略、秘密工作、虚偽宣伝、虚偽策謀の戦争、傀儡政権、領土侵略、他国支配、国家転覆、官僚主義等

    束縛:法制、宗教、教育、労働等の弾圧強制、植民、拉致、独裁、支配、拘束、秘密、諜報、軟禁、投獄、官憲軍政等の統制、強制等

    差別:国家、宗教、信条、文化、人種、階級、身分、勲章、顕彰等の差別法制執行、優遇、委譲、格差社会、天下り等

    搾取:徴兵、徴税、領土、資源、言論、思想、信条、宗教、教育、姓名等諸権利の剥奪搾取、教育、宗教、言語等の強制、政財軍産癒着、汚職談合等

    殺戮:大量殺戮(人間、生物等)、粛清、暗殺、拷問、死刑、国家行政の怠慢、誤謬等による薬害公害戦争死等

    地球と生命の窮地にあり地球生命システム(体系)崩壊が何時でも起きうる最大の原因は国家悪の戦争である。歴史の流れは都市国家、藩国、州 邦から国民国家へと拡大統一し「刀狩り統一」が成された。次の段階は国際連合から地球政府-地方主権等への移行である。これは地球問題群による地球生命体 系全体の要請である。部分下位体系の国民国家の「主権」は時代錯誤である。主権(sovereignty)は絶対王権の遺物であり全体上位体系の存続から 不適である。国家体系内部(相対-相依:民主)においても上位地球生命体系(生命-母体:生命)においても絶対権力は誤りである。権力者が行なう戦争も体 系調和から誤りである。今や国家と戦争を超え地球生命系調和への枠組転換が緊要である。

  2. 戦争の原因

    戦争の定義からして「国家」が戦争の主要な原因である。国家は国土、国民、主権より成るが、国家は金字塔構造であるため主権は支配権となる。国家は 対外的に外交、軍事を行なう。外交が最高手段であるべきだが、軍事が最後手段とり外交が軽視される。支配者は対内的に内攻、支配を行なう。支配者または支 配者グループ(政官財等)は「国家」の利益、保護を名目に戦争をするが、国民全体が賛成し利益を受ける訳ではない。実際は支配者小集団、目先の利益の為に 戦争が行なわれ、国民、国土は長期的な不利益(人的物的負担、犠牲)を受ける。戦争は地球生命体系の全体的長期的観点からは大損失である。戦争の原因は仮 構の「国家」への忠誠と利益にある。利益は一部集団のもので国民、地球生命体系全体のものではない。

    戦争の起源、開始、歴史、特徴、根拠、原因、解決、転換:

    • 起源:都市国家間の戦争(5千年前)。
    • 期間:人類史(5百万年)の千分の一。
    • 特徴:人間の文明社会にのみある人工的大惨事。
    • 根拠:「工作人間」(軍事技術)、「社会人間」(国家集団)、「象徴人間」(観念感情)による。
    • 原因:三毒(貪瞋痴)、文明(物、力)欲。
    • 解決:三学(戒定慧)、文化(心、命)へ転換で可能。
    • 転換:枠組転換(国家から地球)の必要。

    戦争は本能によるのでも不可避でもなく、人類史から見たら最近始まった不自然事である。それは真理と平和を無視し物欲、権力欲によって起こされる異常事である。戦争は廃止できるし、廃止しなければ人類生類が破滅に向かう。

    戦争はその直接原因と根本原因、即ち軍備、国家、仮構の廃止と貪欲、怒り、無知の停止により廃止できる。

    a) 戦争の直接原因の廃止

    ア.軍備が無ければ戦争はできない。軍備の無い国があり、軍縮も可能である。戦力、戦争を放棄した憲法もあり、これを世界に広めれば戦争は 無くなる。軍隊は生命体系を破壊し核の破局からも人類、生類に対する罪である。普遍的な地球倫理は殺生を最悪の罪過とするのに敢えて犯すのは極悪非道であ る。軍隊保持、増強は政、官、財等及び一般の貪慎痴に根元がある。即ち利己の為に他を殺戮、搾取、差別すると言う根本妄想、狂乱である。世界の軍事費(年 百兆円)の2%で平和産業に転換でき、10%で環境、資源、貧困、人口問題を解決できると言われ、「死の」兵器製造販売等を含む軍備の縮小、廃止が急務で ある。

    イ.国家が無ければ戦争は無い。国家成立以前、消滅以後には戦争は無い。その移行過程に欧州共同体、国際連合、国際司法裁判所のような超国 家組織がある。これらを拡大強化して行けば戦争は無くなる。国民国家は民族単位とは限らず人為的に最近作られ、変化するものである。「国家の神話」が示す ように「国家」は仮構のもので、この信仰が生贄を生む。国家の改変、消滅が歴史の流れである。

    ウ.国家、宗教、企業、教育、メデイアは現代の「五つの仮構体」(fictitious bodies)で主役である。国家は利用、支配し、利用、支配される。これらが利己的になり国民、国土、地球、環境等に害し戦争に加担しないよう警戒し改 善する必要がある。非政府組織、非営利組織等はこれらを改良する動きであり、利己、五禍を除き戦争廃止に向かっている。五仮構体による金字塔文明を自然本 来の一円環文化へ枠組転換する必要がある。

    b) 戦争の根本原因の排除

    ア.貪欲が戦争の直接原因である。個人及びその集合体(特に五仮構体)の物と力(それを買う金)の欲が金字塔文明の五禍となり戦争を起こ す。仮構体を動かすのは個人であるから個人の貪欲を抑え無くす事が必要である。有限の物と力を奪い合いの戦争は心と命を満たさずむしろ破壊する。無限の心 と命の分かち合いの文化を教え育て、一円環文化の五福(真理-覚醒、自由、平等、博愛、平和)を願うべきである。

    イ.怒りも戦争の原因になる。個人及びその集合体の怒りの応酬は悪循環であり、好結果を生まない。利己を止め、全体観と実践力を修養、共有して競争、戦争から共生、平和へ向かう必要がある。個人、団体、仮構体、超仮構体の不断の変革、協働が必要である。

    ウ.無知、特に全体体系の無知、即ち根本無知である自己中心主義(「群盲撫象」の過誤)が怒り、貪欲を生み、戦争を生む。従って、自己を出 発点とする思考、行動、法律、制度など全てを地球生命体系の維持可能性といった時空全体からの視野、陶冶、調和、平和に転換する必要がある。個人、団体等 の連携、共栄は全体体系の要諦である。自己と生命、部分と全体は泡沫と大海に喩え得るが、大海(全体生命体系)の知識と行動(真理と倫理)が肝要である。 海が干上がれば泡は無くなるのでこの根本的枠組転換が急務である。

  3. 戦争の解決

    戦争の解決には以下の枠組転換が必要である:

    • 五禍から五福へ
    • 文明から文化へ
    • エゴからエコへ
    • 罪悪から聖性へ

    具体的には、金字塔文明(金支配)から一円環文化(命尊重)へと向かい、「有限な力、物の奪い合い」(政治・経済)から「無限な命、心の分かち合 い」(社会・文化・生態)へ転換する必要がある。自己中心的な国家、企業、宗教、教育、メデイアの五仮構体を生命中心的な非集権的、非営利的、非独断的、 非統制的、非宣伝的な組織に改革する必要がある。

    金字塔文明とその主動因の五仮構体の機能、功罪は運用する人間による。戦争を廃止するには人間の変革が必要である。それは個々人の智と行の問題であり、三毒の解決は三学にある。地球時代の地球問題群を解決するには地球体系の真実を知り、地球倫理を行なう事にある。

    戦争の根本的、具体的解決策

    • 法律、制度の運用は人間による。
    • 戦争は人間の心に始まり終わる。
    • 根本的原因:三毒(貪、慎、痴)
    • 根源的解決:三学(戒、定、慧)
    • 地球系真理の知と地球倫理の行

    上記4は意情知に対応し行知はガンジーの二原理(表裏一体)に対応する。:

    三学: 戒:不傷害(a-hims..)

    定:不動、不異、不畏 (禅定:戒慧の基盤)

    慧:真理抱擁(satya-..graha)

    上記5は全体生命系を知り地球倫理1を行なう事である:
    宗教の理想は全体健全にあり、地球倫理もそれに基づいている。
    宗教religion (ラテン語re-ligare 「再-結合」より)は「the holy(聖)[wholesome (健全)whole(全体)]への再結合」を意味し、「聖なる教え」である。
    その知[Prognosis(智慧)] は普遍真実(Dharma, Dao, Deva, Deus, Jovis, Ju(-piter), Yhvh/Yahveh, El, Allah等) の一体世界を知ること。
    その行[Practice(修行)]は普遍的倫理を行なうことである。それは「共(友)」であることである。(Mitra, Metteya, Maitreya, Mithra, Mazda, Messiah, 弥勒等は「友」の意)
    知行の無視が利己と罪過を生み出した(戦争等)。歴史上、制度的な宗教は利己に陥いるので真実、理想の宗教に再帰する必要がある。五仮構体も利己に陥って 人類文明全体が地球生命体系の問題群を作り、破局に向かっている。下位部分系が上位全体系の破滅を引き起こす五禍を阻止し五福を実現する必要がある。

  4. 解決の方法

    生態系の癌の如き文明系が地球問題群の元凶である。その最悪事である戦争を止めなければ生命は止む。戦争は部分少数者の五禍による全体生態系の破壊 である。自己中心(泡沫)が戦争、文明、地球問題群の根源にある。地球生命の時空進化(大海)の知行により地球生命系の五福が実現される。四十億歳の生 命、生命圏は一体平等であり、本来誰にも殺生、強奪の権利は無い。
    非合理、計画的、大々的な殺戮、破壊をする戦争は狂気、凶行である。戦争は全生命にたいする罪悪である。これを放置する者は共犯者である。万人が万物に戦 争の責任を負う。それを阻止、廃止することは万人の責務である。全ての個人、組織があらゆる時所レベルで障壁を低くし無くし、不真実と暴力を無くし、利己 主義(個人、国家等)を超えて人類、生類として共生、協働に努力すべきである。

    具体的作業:

    • 関心:自他の無関心、無覚醒、無気力、無行動、無責任をなくすよう努める。
    • 研究:戦争の問題、原因、解決、方法について万人が研究、熟考、理解する。
    • 教育:研究の結果をあらゆる機関、制度、手段方法を用いて周知、教育する。
    • 廃止:多様な戦争の阻止、廃止の方法、法律、制度を模索、策定、実行する。

    具体的方法:

    • 協力: 個人/団体協力、統合、ネットワーク化(情報、行動の連絡、交換等)
    • 運動: 個人/団体署名、請願、デモ、宣伝、宣言(民主化、地球化、情報化)
    • 変革: 習慣、法律、制度の改革(憲法、条約、宣言、組織、予算、学問等)
    • 廃止: 五仮構体、現体制の改革、改善、移行、廃止(地球村、地球政府等)

    体系各レベルの行動(相互影響とネットワーク:行動の一例):

    個人レベル地域レベル国家レベル国際レベル地球レベル
    宣誓条例省庁宣言機構
    学習教宣教育研究調査
    実行事業祭日行事取組
    連帯連携交流条約帝網

結論

現在の人類文明体系は金字塔構造(部分一極不自然体系)で五禍を生み、戦争を生む。文明の五禍は一円環構造(全体循環自然体系)で文化の五福に枠組 転換しなければならない。文明、国家、戦争は全体生命系に違反し、罪悪をなしているので変革、廃止に向かう必要がある。それは体系各レベルでこの事を認 知、周知して協働し、地球倫理を義務として実行すれば平和は可能となる。
「帝(釈)網」とは宇宙を覆う網目の水晶が無限に映しあう重々無尽縁起世界の例示である。地球生命系も本来そうであるから全ての生命が中枢なき中心 (center-less centers)として真善美聖、全体健全が実現されうる。是は全体体系の本来の姿(個-全、地域-地球が反映、反応)に復帰できる。個人、国家等の障壁 低くし、無くするのが過程、課題である。
普遍法(縁起、因果)により利己=罪(sin=separation)が競争-戦争になるが、無私=聖 (holy=wholesome whole)が共生-平和になる。全体健全こそ全てが全力を傾けるべき事である。三学により個人(泡沫)は「庭前柏樹子」(tree=true)のように 五福に生きて、「尽十方一顆明珠」(透明個=全)の無限生命界(大海)を実現できる。多数の人間が友として五禍を止めれば集団としても戦争廃止システムを 実現できる。

注1.地球倫理は1993年シカゴでの世界宗教会議で出された「地球倫理宣言」に「四つの取り消し不能の教令」として1)非暴力と生命の尊重、2) 一致団結と公正な経済秩序、3)寛容と真実の生活、4)男女の平等な権利と共同を掲げる(宗教共通の五戒、十戒の応用)。筆者はこれに普遍的法(因果、縁 起)を加え記憶し易いように5Lとしている。同様に地球体系については5Sを、物資流、情報流の具体的行動については5R、5Aを提案している。
5L:Law(普遍法), Life(生命), Love(愛情), Liberation(解放), Lielessness(不偽)
5S:Systemic(組織),Sustainable(維持可能),Saving(節約=救済), Safe(安全), Simple(質素)
5R:Reduce(削減), Reuse(再使用), Recycle(再循環), Rearrange(編成), Restore(復元)
5A : Access(接近), Assess(評価), Agree(同意), Act(行動), Advise(告知)