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編集後記

六月の末だったろうか。夜明け前に目覚めて庭に出た。月も星もなく、空気がもんやりしていた。ふいと、ケキョケキョ、と鳥のさえずりを耳 にした。隣家の庭からだった。一度きりだったが、鶯に間違いない。毎年、月山に上るので、八合目から九合目にかけての潅木に群がってさえずる鳴き声には、 しっかりと聞き覚えがある。蔵王のお釜辺りの這い松にも夏はさわに潜んでいて、こうした鳴き方をする。春先に里を訪れ、ホーホケキョ、とのどかに囁きかけ るのとは随分違うのである。

 それにしても、この時期にこの場所で、と私は訝った。三十年来、山形のこの地に住んでいるが、初めてである。郭公については、しばらく前 から、すでに六、七年になるようにも思われるが、確かに異変がある。五月の連休明けの頃、我が家の東南に見える西蔵王高原の大山桜が咲き揃う。終いに西行 桜が散り、代わって辛夷の白い花が開き始めるのだが、その辛夷の枝で、例年、郭公が麗らかに啼くのであった。それから暫くして、里に降り、我が家の辺りを 数羽が行き交いだす。近所の公園に三十メートルに達するかのような辛夷の大木があり、満開のその天辺で元気よく啼き出すのを、流しの北窓から家族みんなで 聞くのが楽しみだった。

 ところが、最近、郭公の来訪がだんだん遅くなり、かつてはあんなに正確だったのに、時期も乱れ、ここ一、二年は見かけるのも稀になってし まった。植物界にもいろいろ変化が報告されているが、動物界の異変は遥かに激しく急なようである。地球環境の異変が実感される。人間界も影響を免れ難く、 闇サイトや学校裏サイトが侵入して情報社会を攪乱している。今や教育界を悩ませる大問題となっている。

 さて、ようやく『地球システム・倫理学会会報 第2号』をお届けすることができました。会員諸兄姉の温かな御協力にもかかわらず、私の非力のせいで御迷惑をおかけしてしまったことを、心より御詫び申し上げます。

 宇宙生命科学者の松井孝典教授が、フロー依存型人間圏とストック依存型人間圏について持論を展開されているが、実に説得力がある。地球シ ステム・倫理学会も、いま、フロー依存型からストック依存型に転換しつつあるようにも思われるが、ますます発展することを祈念致します。(平田俊博)